福岡地方裁判所 昭和44年(ワ)164号・昭44年(ワ)810号 判決
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〔判決理由〕(一)原告が被告から本件建物(その範囲は別として)を昭和三七年三月頃以降賃借しているのは当事者間に争いがない。そこで本件賃貸借契約の目的物の範囲について判断するに<証拠略>「原告は昭和二三年三月より訴外竹房重雄の経営する丸竹商会に勤務していたが、昭和三七年に同商会を退職するに際し、退職金替りに同商会より板金加工場施設、並びに機械工具等、その他の権利を譲り受け、更に同年一月に訴外竹房重雄の立会いのもとに被告との間で被告方階下一九坪五合を目的として、賃貸借契約を締結したことが認められ、次に証人竹房重雄の証言によれば、右一九坪五合の中には、材料庫、事務室、更衣休息室(被告主張の各事務室、食堂、休息室)、更に、被告との共同使用のもとに、炊事場、浴室、便所も含まれることが認められる。従つて、被告は、賃貸人として本件係争部分である事務室、更衣休息室(別紙物件目録記載附属図の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(イ)に囲まれた部分)を賃借人たる原告に、使用させる義務がある。
(二) しかるに、被告が本件係争部分である事務室、更衣休息室に被告所有の物品(家財道具の類)を搬入したことは当事者間に争いがなく、更に、<証拠>によれば、右搬入の時期は原告、被告間の感情のもつれから被告が原告の職場をやめた直後の昭和三八年七月頃からであり、再三の原告の要請にもかかわらず、被告は右家財道具を搬出することなく、原告の、事務室、更衣休息室の使用を妨げていることが認められる。
(三) 本件係争部分の面積が2.34坪であり、賃借部分に対する割合が約一割四分九厘であること、および本件賃料が一ケ月金六、〇〇〇円であることは当事者間に争いがなく、また前記認定した如く、被告の家具類搬入始期は、昭和三八年七月であるから、訴提起の昭和四四年二月五日まで六七ケ月を経過している。従つて、原告の損害額は金六、〇〇〇円に0.149、および六七を乗じて得られた金五九、八九八円と解するのが相当でるあ。
(四)<証拠略>原告は、自己の退職金替りの名目で被告方普通家屋の工場への改造、増築費用、金七五〇、〇〇〇円を訴外丸竹商会に負担してもらい、被告は原告のもとで、働く約束であつたこと、前記、被告の家具搬入が原、被告間の些細な感情のもつれによること、および原告が他に工場を求めることは困難であつたことが認められるが、以上の事情のもとにおける原告の精神的苦痛は前記認定した財産的損害の填補により償われたとみるのが相当であり、原告の慰藉料の請求は失当である。(安東勝)